前回から「正しい食生活」についてのお話はスタートしましたので続けてご説明いたしましょう。
健康の4つのサイン
健康の山と病気の山とは、すそ野でつながっていると考えてよいと思います。
健康の山の頂上のサインは「快食・快眠・快便・心の輝き」の4つです。
快食とは朝から“おいしい”と思ってしっかり食べられることです。
快眠とは、寝つきも良く目覚めも良いことです。快便とは、朝食の前にお通じがあることです。
心の輝きがあるとは、暗いと不平を言う前に進んで灯りをつけられることを意味します。
健康の山の頂上にいると、いつも穏やかな心が宿り、明るく振る舞えるので笑顔も多く、根気や集中力も良く、判断力なども冴えるので、「人間到る処青山あり」の心境で”勇気と知恵と努力“を友に人生を拓いていけます。
何事も前向きに取り組めるので、ピンチをチャンスに変えられます。
さらに「類は友を呼ぶ」の諺のように、好ましい人との交流が深まり、いずれは心豊かな社会が築けるであろうと思えて、喜ばしい気持ちとなります。
ぜひ、一人ひとりが自覚を持って健康管理に取り組んでほしいと願わずにはいられません。
この健康管理には「快食・快眠・快便・心の輝き」を日々チェックして、望ましい状態を保つ努力が欠かせません。実践すべきは「正しい食生活」なのです。
食事のとり方について
食事のとり方には4つの基本原則があります。
1.毎食均等に。しかも重要な栄養成分に不足をきたさないこと。Each meal perfectが鉄則です。
2.感謝の心でよく噛んで、ゆっくり食べること。15分はかけたいものです。
3.先手必勝、後手必敗と心得ること。朝食が一番大事です。
4.睡眠を十分とる。成人は8時間の睡眠時間を確保すること。高校生は9時間、スポーツをする人は10時間が必要です。
基本原則1
この“Each meal perfect”を提唱したのは佐伯矩先生(国立健康・栄養研究所の初代所長)です。
前回に述べましたが、栄養を1日量でみることの誤りを実験で見事に示されました。
重要な栄養成分の順位は①蛋白質、②カリウム、③ビタミンC、④鉄、⑤ナイアシンとビタミンD、⑥ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、カルシウム、リン、食物繊維、⑦糖質、脂質、エネルギーと続きます。
蛋白質、カリウムを摂取せずにビタミンCをとってもダメです。
効果は半減します。
各栄養素にはそれぞれ重要な生理的役割がありますので、不足すると機能低下を招き、遅かれ早かれ病気を招く結果となります。
そうした事態を防ぐには、食品を見て重量(グラム)の分かる能力をまず身につけた上で、よく使用する食品について日頃から栄養成分の含有量を覚えておくことが大切です。
そうすれば、何をどのくらい食べたらいいのか、だいたいのところはつかめます。
覚えようと思えば覚えられるものです。健康を維持するために、その程度の努力はしていただきたいものです。
基本原則2
青群の食品、つまり野菜・果物・海藻・茸などはよく噛まないと、食品に含まれている栄養成分は吸収されません。
「ひと口30回噛む」ことがとても重要なのです。
噛むことによって食品を構成している細胞が破壊され、細胞内の栄養分が放出されやすくなるからです。
基本原則3
食事が質・量ともに不足すると、必ず後から大食いしてしまうものです。
蛋白質をとりすぎると、必要以上のものは脂肪に合成して貯蔵するシステムがあるので、肥満や痛風の原因となってしまいます。
とくに夕食中心の食生活が肥満を招きます。
アメリカで、若者を対象に1日分の内容を同じにして、食べ方だけを変えてみた1ヶ月間の実験が行われました。
朝食で1日量を食べた若者に体系の変化は見られませんでしたが、夕食で1日量を食べた若者は、1人を除いて全員が肥満となってしまいました。
この実験からも分かるように、体を動かす前にこそしっかり食べておくことが大切なのです。
夜、入眠すると、交感神経系の活動が抑制され、副交感神経系が優位となりますので、インスリンの作用が増し、蛋白質成分のみならず、脂肪合成、グリコーゲン合成を盛んにします。
ですから、夕食での過食は必ず肥満を招き、様々な生活習慣病【糖尿病、高血圧、脂質異常症(旧高脂血症)】を併発してしまうのです。
さらに心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を発症する確率が高くなるのですから、肥満は病気の元凶!と心得て回避しましょう。
基本原則4
毛細血管の血流量は、最小動脈の血流量に左右されます。
睡眠が不足すると、この最小動脈にあるリング状の括約筋が収縮してしまうので、毛細血管への血流は停止し、細胞への酸素や栄養分の供給が途絶えてしまいます。
毛細血管の部位で、血液から細胞に必要な物質を運ぶ組織液(細胞間液ともいう)が生み出されているのですが、血流が止まるとその組織液がつくられず、したがって細胞に酸素や栄養分がいき渡らなくなってしまうのです。
私たちの身体の毛細血管の総延長距離は10万km、地球の2周半にも相当します。
だから、睡眠はとくに大切なのです。スポーツをする人はより多くとる必要があります。
睡眠不足の人は外傷や病気を招きやすくなりますので、とくに注意しましょう。
各栄養素の生理的役割についてはすでに述べましたので、どうぞパーフェクトメニューを参考にしばらくの間、そっくりまねして食べることをお勧めします。
健康を客観的に評価する方法について
家庭の幸せも、企業の発展も、まず、人あってのことです。
ならば、ベストコンデションで仕事ができたり、日々を過ごすことのできる人々の集まりであることが望ましいでしょう。
そこに健全な精神も宿れるわけで、これ以上の喜びはありません。
ベストコンデションであることの確認には
まず、健康という山の頂上のサインである「快食・快眠・快便・心の輝き」が揃っていることです。
そして、次の3つが揃っていれば、客観的にもベストコンデションといえます。
1.不定愁訴がない
2.笑顔が多い
3.やる気がある
寝つきも目覚めも良く、眠りも浅くないことと、朝食がおいしく感じられることが揃って いると、体調の良さを自覚しやすいものですが、ベストの条件は前述のごとしです。
不定愁訴は敏感なサイン
明確な器質的疾患が見られないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態を不定愁訴といいます。
この不定愁訴は健康状態を敏感に反映します。
統計解析によれば「不定愁訴の強さを、不定愁訴の数で表してよい」とのこと。
不定愁訴のない状態が最良です。
不定愁訴の30項目を列挙しておきます。
「ミラー」(食生活分析診断)
髪や服装を鏡(ミラー)に写してチェックするように、ふだんの生活の様子を、食生活を中心に、ありのままに写して、生活習慣の誤りがどこにあるのかを客観的にチェックし、評価しようというもので、私が20余年に及ぶ臨床経験から創りだしたものです。
ミラーの記入用紙は、1.生活 2.食事 3.病歴 から成り立っています。
生活については、睡眠・体調・活動状況・不定愁訴・スポーツ等々の17項目を記載していただき、食事は実際に食べた内容を「いつ・何を(食品名)・どれだけ(グラム数)・何分かけて食べたか」を記載していただきます。
評価について
食事の分析結果と総合評価は、A~Eの5段階としています。わかりやすいグラフ化と数値で表しコメントをつけて返却します。
休日を含めた食生活を記録しましょう。最低3日間は必要と思います。
病気で悩んでおられる方には、ご希望に応じて個別指導も行っております。
ご自分の体調を客観的に冷静に見つめてみる良い機会となり、健康の維持管理に問題がないかを判断することにもなりますし、健康診断と併用しますと検査データの異常値の原因究明にも役立ちます。
「ミラー」食生活分析診断のサンプルはこちらから