第6に重要な栄養素は、VB1、VB2、VA、Ca、Pです。
ビタミンB1(サイアミン)
[性質]
水に溶けやすく、熱に弱く分解する。アルカリ液(重曹など)内で加熱すると容易にこわれる。弱酸性には安定。
[生理作用]
ビタミンB1はサイアミンピロリン酸という形で、補酵素として糖代謝に関与する。体のすべての細胞に必要である。
[欠乏症]
糖代謝に支障をきたすため糖分を主たるエネルギー源とする神経系に症状が出現し、多発性神経炎、脚気、便秘、筋力低下などをみる。
[備考]
調理による損失が著しく多いので、計算上の半分くらいしか実際にはとれないことを認識しましょう。
VB1の1食の目安値は0.40mgくらいです。
VB1を多く含む食品は、赤群とくに豚肉に多く、魚・豆にもみられる。
[食品100gあたりの含有量mg]
豚肉
は(もも)0.94mg、(ひき肉)0.62mg、(ばら)0.54mgと豚肉に多く含まれる。ちなみに牛と鶏は、牛肉(もも)0.25mg、鶏肉(もも)0.22mg
レバー
では、鶏0.38mg、豚0.34mg、牛0.22mg。
一方、魚では、
うなぎ(かば焼き)0.75mg、たらこ0.71mg、すじこ0.42mg、ぶり0.23mgだが、魚の多くは0.1mg前後の含有量である。
いわし0.03mg、さんま0.01mgは少ないことを認識しましょう。
よく使う食品については、含有量を確かめましょう。
豆では、グリーンピース0.29mg、えんどう豆0.27mg、大豆0.22mg。
茸では、ひらたけ0.40mg、えのきたけ0.24mg、まいたけ0.25mg。
そこで野菜をぬか漬にすると、VB1が増える。(下表)
先人の知恵を大事にしたい。
[食品100gあたりのVB1含有量mg]
|
かぶ根 |
かぶ葉 |
なす |
キウリ |
塩漬 |
0.02 |
0.07 |
0.03 |
0.02 |
ぬか漬 |
0.25 |
0.31 |
0.10 |
0.26 |
ぬか漬は、「ぬか」の成分が野菜に移行するため、ビタミンB1、ナイアシン、カリウムが豊富に含まれる。ただし、これはぬか床の中に野菜を漬ける方法のデータであり、市販品(野菜にぬかをまぶす方法)では、これらの成分の含有量は高くならない。
ビタミンB2(リボフラビン)
[性質]
光やアルカリで分解される。水に溶ける。熱や酸にはやや安定。
[生理作用]
生体酸化に関与する重要なフラビン蛋白として補酵素の役割を果し、酸化還元反応で水素伝達作用を行う。
その他糖質代謝、脂質代謝、蛋白質代謝においても補酵素として活躍している。
[欠乏症]
皮膚と眼に現れ、皮膚炎、口唇炎、口角炎、角膜炎の他、成長停止もおこる。
[備考]
日本人に欠乏しやすいビタミンの一つである。調理による損失が大きいので不足しないように配慮する。
VB2の1食の目安値は0.50mgです。
VB2を多く含む食品は赤群とくに魚介類、肉類のレバー、豆類の納豆、卵です。
[食品100gあたりの含有量mg]
どじょう1.09mg、すじこ0.61mg、ずわいがに0.60mg、うなぎ0.48mg、たらこ0.43mg、ぶり0.36mg、うるめいわし0.36mg、まいわし0.36mg、さば0.28mg
レバー
(豚)3.60mg、(牛)3.00mg、鶏1.80mg
糸引納豆0.56mg、鶏卵(2個で100g)0.44mg
ビタミンA
[性質]
脂溶性で水に溶けない。熱にやや不安定、酸化・乾燥・高温で破壊される。
[生理作用]
網膜における明暗の感受(ビタミンAは光を感受するロドプシンの形成に利用される。この際ナイアシンも関与する)。
皮膚や粘膜の上皮細胞の保護作用。感染症の予防(抗酸化作用、抗発癌作用及び免疫賦活作用)。
長骨の軟骨性組織の増殖、形成、成形化及び歯間設定と歯のエナメル質の形成。
[欠乏症]
夜盲症、皮膚や粘膜の上皮の角質化、感染に対する抵抗力の減少、成長期では骨や神経系の発達遅延。
ここで少し詳しくみてみますと以下となります。
ビタミンAは肝臓や卵黄のような動物性食品にのみ存在する。
一方プロビタミンであるβ-カロテンは植物性食品にのみ存在する。
β-カロテンは抗酸化物質として、また細胞間の情報伝達や細胞増殖の調節因子として、ビタミンA活性とは別の機能も持っている。
ビタミンAは以下のような機能のために必要である。
1.夜間視力
2.角膜、すべての粘膜、消化管の内壁、肺、膣、尿路及び膀胱、皮膚を含む上皮組織の維持増殖
3.感染症の予防、上皮組織とくに感染に対する生体バリアとしての肺、皮膚、口腔内膜、喉などの維持に不可欠な役割を果たしている。このためビタミンAは細菌感染で惹起される角質化による組織損耗を予防する。ビタミンAは免疫機能、とくにTリンパ球や貧食作用を維持するうえでも重要である。β-カロテンも免疫機能を高める。
4.長骨の軟骨性組織の増殖、形成、成形化、及び歯の間隔設定と歯のエナメル質の形成
5.ヒトの生殖機能
一食の目安値は210μgとしているが、ビタミンAは肝臓に貯蔵されているので、必ずしも毎日摂取しなくても直ちに不足することはない。
過剰摂取すると、吐き気、頭痛、発疹、下痢などの症状が現れる。「過剰症」の恐れから、ビタミンA(レチノール)の摂取は成人では1日3,000μg以内とされている。
一方、β-カロテンは、1日30mg以上を摂取しても手のひらや足のうらが黄色くなる症状以上の毒性は認められません。
ビタミンAを多く含む深海魚や鮫などの胆を食べた人の中にも時おり過剰症の発症が見られることがあるそうです。
VAを多く含む食品(食品100gあたりの含有量μg)
鶏レバー |
14,000 |
豚レバー |
13,000 |
牛レバー |
1,100 |
あんこうきも |
8,300 |
うなぎ |
2,400 |
ほたるいか |
1,900 |
すじこ |
670 |
あなご |
500 |
しそ葉 |
880 |
人参 |
720 |
パセリ |
620 |
ほうれん草 |
450 |
春菊 |
440 |
にら |
370 |
西洋かぼちゃ |
330 |
カルシウム(Ca)
成人の体内に約1kg存在しその99%はリン酸塩・炭酸塩として骨や歯の成分となっている。
残り1%は、血液をはじめとする体液・筋肉・神経などの組織中にある。
骨は不変なものではなくたえず作りかえられている。
ビタミンC欠乏や低栄養状態では、コラーゲン繊維の形成不良により骨の育成が障害され骨折しやすい脆い骨となる。
その他、血液の凝固機構や、カルシウムイオン受容蛋白カルモジュリンを介して多くの重要な代謝(グリコーゲン代謝や筋収縮機構など)に関係する。
ここでカルシウムの機能を少し詳しくみてみますと以下となります。
1.骨と歯の形成と維持に関わる。
2.創傷治癒の初期段階における正常な血液凝固作用を助ける成分の1つである。
3.カルシウムは、多くの酵素の生成および活性において機能している。そのような酵素には、例えば筋肉収縮時のエネルギー放出に不可欠なアデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)などがある。
4.蛋白質由来ホルモンは、その合成、分泌、活性にカルシウムが必要である。
5.カルシウムは、通常の神経伝達および心拍動の調節に不可欠である。
6.筋肉の収縮、緊張、および刺激反応性は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質とともに、カルシウムによっても左右される。
7.シナプス接合部における神経伝達物質の放出と同様に、栄養素の細胞膜通過も、カルシウムに依存している。
[欠乏症]
骨粗鬆症:骨からのカルシウムが失われた結果現れる最も典型的な疾患である。
骨密度の低下に伴って、骨の強度を維持することができず、小さな力がかかっただけで骨折することがある。
血中カルシウム濃度が低下した場合、テタニー症状が現れ、神経過敏や、下肢痙攣などの筋痙攣が発現する。
カルシウムの欠乏症状は、食事からの摂取不足や、胃酸分泌量の低下による胃内のアルカリ性環境、ビタミンDの不足状態、胃腸の運動の増大によって起こる。
カルシウムの吸収率を低下させる他の要因としては、ほうれん草やふだん草、ビートの葉に含まれるシュウ酸、発酵させていない全粒穀物に含まれるフィチン酸の多量摂取、肉や炭酸飲料、加工食品などのリン含有食品の多量摂取、運動不足、ストレス、利尿薬や緩下薬、または、アルミニウムを含む薬剤の長期間にわたる服用などが挙げられる。
食事中のカルシウム摂取は、食事中のシュウ酸の吸収率を低下させることによって腎臓結石の危険性を減少させる。
空腹時にカルシウムサプリメントを摂取しても、食事とともにカルシウムを摂取した場合と同様の効果を期待できないことを認識しましょう。
シュウ酸の多い食品(ほうれん草など)を食べる時は、とくにカルシウムを十分に摂取しましょう。
そうすることで、シュウ酸とカルシウムが結合(シュウ酸Caとなり吸収されずに排出される)して排出されるので、腎臓結石を予防できます。
一食の目安値は300mg位です。
Caを多く含む食品100gあたりの含有量mg
[魚介類]サルエビ(殻付き干しエビ)7,100mg、桜えび(素干し)2,000mg、煮干し(いりこ)2,000mg しらす干し520mg、どじょう(水煮)1,200mg、ふな(甘露煮)1,200mg、わかさぎ450mg、桜えび(ゆで)690mg、ししゃも350mg
[緑黄色野菜]とうがらしの葉490mg、パセリ290mg、しそ葉230mg、大根葉220mg、かぶ葉190mg、京菜(水菜)200mg、まびき菜170mg、小松菜(ゆで)150mg、チンゲン菜(ゆで)120mg、なばな140mg、おかひじき150mg、よもぎ140mg
リン(P)
成人の体内に約500g存在しその90%はリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムとして骨や歯の成分となっている。
血液中のリン酸塩は血液の酸―塩基平衡に関与する。
すべての細胞内に存在し、核酸のリン蛋白質成分やATPなどの高エネルギーリン酸化合物、またビタミンB1・B2などと結合して補酵素となる。
細胞膜ではリン脂質として膜の成分となっている。
ビタミンDが不足すると利用率が低下する。
リンの1食あたりの目安値は300~400mg位です。
[リン欠乏症状]
骨軟化症、骨粗鬆症、関節炎、だるさ、食欲不振、体重減少、筋力低下、集中力低下などが現れる。
リンとカルシウムの摂取は1対1の割合が理想的です。
リンをとり過ぎると、カルシウムが骨から溶け出て、血液中に放出されてしまいます。
リンは加工食品の添加物としても使われるため、インスタント食品や加工食品のとり過ぎに注意しましょう。
食品100gあたりのリンの含有量(mg)をみますと、魚と肉は200~300mg、豆類は100~230mg前後です。
大豆190mg、そら豆230mg、いんげん豆150mg。
卵(2個で100g)180mg、うずら卵220mg、比較的含まれていますが、他の食品はリンの含有量は100mg未満と少ないです。
イモ類は30~60mgと少ない。
果物10~20mgと少ない。
ごはん(精白米)34mg、玄米ごはん130mgと少ない。